今回はエネルギーについて考えてみたいと思います。我々は生きるために必要なエネルギーを得るために食料を食べます。1gの水を1℃温度を上昇するのに必要な熱量が1cal(カロリー)。我々が食事から得るエネルギーは毎日約2000kcal。毎日1tの水を2℃上昇させるほどのエネルギーを食事から摂取し、日々生きている訳です。
これがどの程度のエネルギーになるのでしょうか。エネルギーの単位は上述のcalとJ(ジュール)、W(ワット)などが互いに結びついています。1cal=4.2J、1W=1J/秒といった具合です。日々の食事のエネルギー2000kcalはJに変換すると8400kJ、1日は86400秒ですから、97J/秒≒100J/秒=100Wということで、日々の食事で摂取するエネルギーが電気でおなじみのワットに変換できました。我々は100Wを消費する電球と同程度のエネルギー消費を行っていることになります。日本人の人口は1.2億人ですから、1200万kWの消費エネルギーになります。
一方、原子力発電所の1基の出力は100万kW、実に日本人が生きるために消費するエネルギーは原子力発電所12基分という莫大なエネルギーになります。全国の人のエネルギー消費が福島第一原発(6基)の2か所分ということが多いと感じるか少ないと感じるかは意見の分かれる所でしょう。ちなみに太陽から地球に降り注ぐエネルギーは174PW(ペタは10の15乗)、世界の人口が70億人として人類の生命維持のエネルギーは7×1011W、地球に擦り注ぐ太陽のエネルギーは人間の消費エネルギーの約100万倍となります。
燃費10km/Lの車が1km走るのに使うガソリンは0.1L、およそ3.46MJのエネルギー消費となり、時速40kmで走るなら、1km走るのにかかる時間は1.5分、ワット数は38444Wとなり、実に人間400人弱のエネルギー使用量となります。また新幹線が新大阪―博多間を走るのに使用する電力量は20000kWhだそうです。およそ2時間で走るとすると時間当たりの消費電力は10000kWh、ワットに直すと10000000W。1000人が乗っているとして一人あたりに直すと10000W、人間100人分のエネルギー使用量となります。このように見ますと車や鉄道等の輸送手段は多くのエネルギーを利用して動いていることが分かります。
日本で1年に使われたエネルギーは国のホームページによると14347PJ(ペタジュール)。これをkWに換算すると455百万kW(14347×1015J÷31536000秒)、一人当たりでは3.8kW、一方上述のように生きるためのエネルギーは100W(=0.1kW)ですから生きるために必要なエネルギーの40倍ものエネルギーを消費していることになります。
以前、江戸時代のエネルギー事情に関する書籍を読んだことがありますが、昔の人の方がよほどエネルギーを使わず、賢明に生きていたのではないでしょうか。衛生的なお風呂やトイレ、遠方への旅行等、現在の便利さに慣れ切ってしまった我々には到底戻れるものではないかもしれませんが、ほんの最近まで人間はほぼ自分のエネルギーか、せいぜい馬や牛の力を借りる程度のエネルギーで生活していました。つまり近い過去の太陽エネルギーを利用して生きてきました。
現代は光合成生物が数億年かけて蓄積してきた太陽エネルギーを無頓着に使って快適さを享受しているだけで本当に進歩しているといえるのでしょうか。現代は本当に必要なのか疑問なものに多くのエネルギーが使われているように思います。某ゲームで最近は大騒ぎですが、そのようなものは本当に必要なのでしょうか。ゲームの娯楽性を否定するつもりはありませんが、貴重な化石燃料を焚いて作った電力を使うに値するのでしょうか。私も現代人として快適な生活をさせていただきながら、「いつまでこんな生活を送れるのか、こんなエネルギー大量消費社会がいつまでも続くわけがない」と、漠然とした不安が常に意識の中にあります。
(文責:塚田 創)