とにかく、寒い。まれにみる強烈な寒波の襲来で、15日の最低気温は畑で-15.1℃を記録した。長年にわたって冬場の最低気温を観測してきたが、今回の最低気温がもっとも低かった。仕事がら、厳しい寒さの中での作業は仕方ないのだが、歳を重ねるほどに、つらくなってきた。そのため、体を冷やさないよう、あの手この手で暖を取る日々が続く。
昔は、「風邪は万病のもと」と言っていた。しかし今では、「冷えは万病のもと」と言うのが適切だろう。肉体を酷使した時や猛暑の時期を除けば、体は冷やさないほうが良い。
体が冷えると、血液の循環が悪くなり、免疫力が落ち、すべての細胞の代謝が遅くなる。一言で言えば、生命力の低下を招くことになる。ある産婦人科医がおっしゃるには、「乳房が大きくなると冷えやすく、その部分の免疫力が落ちて乳ガンになる確率が上がります。冷え防止のためにこそ、ブラジャーが必要なのです。」とのこと。
裸の猿である人類は、世界各地に広がっていく中で、いろいろな方法で体を冷やさないようにしてきた。冷えが限界を超すと、即それは死に直結するからだ。そこで、動物の毛皮や布をまとい、洞窟や地下の穴に寝泊まりし、たき火で暖を取った。食べ物もたき火で煮炊きし、速やかに体温を上げる酒や穀物を作るようになった。
そして、現代では容易に体を温められる。よほど貧しいか冬山登山でもしない限り、凍死することなどごく稀(まれ)だ。数万年前の人類が現代にタイムス・スリップしてきたら、簡単に暖を取れることだけでも、たいへん驚くだろう。
それなのに私は、「どんな方法で体を温めるのがもっとも良いのか」などと贅沢なことを考えてきた。手軽に体を温める方法はいろいろあるが、やみくもに温めれば良いというものでもないと思えるからだ。
体を温める方法は、おもに内部から温める方法と外部から温める方法の、2つある。前者には飲食、衣類や寝具、運動などがあり、後者は暖房、入浴、日光浴などだ。多くの情報に目をとおし耳をかたむけ、いろいろ考えてみたが、どの方法にも長短があり、功罪が並存している。残念ながら、完全無欠な方法は見つからない。
酒を飲めば、酔っぱらう。甘いホット飲料を飲めば、血糖値が急上昇する。衣類を何枚も着込めば、肩がこる。運動が過ぎれば、どっと疲れがでる。そもそも運動のための運動をするほど、暇人じゃない。異性と抱き合うのもいいが、マッチ売りの少女よろしく、後で急速に冷える。エアコンをつければ、空気が乾燥し風邪をひく。電気もたくさん使う。歳をとると、入浴も命がけだ。厚生労働省のデータによれば、家庭内で高齢者が亡くなる場所の30%以上が浴槽内で、何と一位。日光浴は金がかからず無難だが、働き盛りの人にはそんな場所と時間がない。まったく困ったものだ。
結局、私が選んだ方法は、適度に体を動かしながら働くことだ。つまりは、農民という肉体労働者だ。厳寒の朝でも、15kgの糠(むか)袋を小脇にかかえ凍った畑に20袋もまくと、体はもうポカポカになる。これぞ一石二鳥。筋肉の老化も防げ、三鳥だ。今冬もすでに200袋まいた。今週からまた400袋ほどまく予定だ。
(文責:鴇田 三芳)