第286話 したたかに生きる

百姓雑話

ジャガイモ畑6月に入るや、ホトトギスの独特な鳴き声が聞こえ始めた。「トウキョウトッキョキョカキョク」などと聞こえるらしい。この地域に南方から渡ってくる夏鳥としては最終の鳥かもしれない。このホトトギスには托卵(たくらん)という習性がある。ウグイスの巣に自分の卵を産み落とし、ウグイスに子育てしてもらう。ちゃっかりしていると言うか、無責任と言うか、はたまた「したたか」と言うか。その習性を人間がどう勝手に評価しようが、営々とその方法で命をつないできたのだから、立派である。

先月下旬に畑に植えたピーマンが順調に育っている。予定どおり15日頃から収穫できそうである。実を収穫する野菜(いわゆる果菜類)に共通しているのは、枝を次々に生やすことである。その枝のすべてに実をつける。なかでも、ナス科のピーマンとトマトは、肥料が十分効いている間は、凄まじい数の枝を出す。写真はピーマンだが、地面近くの葉の付け根ごとに枝を生やしている。一刻も早く、たくさんの子孫を残そうとする習性なのだろう。枝が多くなると病気が出たり、実の品質が落ちたり、収穫しにくくなるので枝を減らすのだが、次から次と枝を生やす。これまた、したたかである。

イチゴは、これから夏にかけ苗を育て、秋に植える。皆生農園でも自給用にイチゴを増やそうとしている。このイチゴも実にしたたかに子孫を増やす。種だけでなく、他に2つの方法で増えていく。一つは「ランナー」という蔓(つる)を地面に沿って次々に伸ばしていき、節々に苗ができる。もう一つは、株元から新たに株を生やす方法である。イチゴには別のしたたかさもある。肥料分の少ない土地に植えると、非常に病気や害虫に強い。何も手をかけなくても、毎年イチゴが成る。きわめて強靭な植物である。しかし、一般に売られているイチゴは農薬づけである。「イチゴ狩り」などと称して洗わずにガバガバ食べる人の気が知れない。農家がたくさん収穫しようと肥料を効かすので、イチゴの体が軟弱になり病気や害虫の餌食(えじき)になる。人間の強欲がなせる結果である。

自然界を身近に観察していると、ほとんどの生き物がしたたかに生きていることに気づく。でなければ、何百万年も何千万年も、あるいは何億年も営々と生き延びてこられない。

(文責:鴇田   三芳)