第377話 豊かさの限界(2)

百姓雑話

かつて、第360話「豊かさの限界(1)」で日本社会が豊かさの限界に達したと述べました。今やこの社会現象が世界の隅々でも起きています。

前世紀の終わりごろからグローバリゼーションの津波が世界をのみこんできました。その波に乗れた一握りの者と乗れなかった大多数の者との格差は拡大の一途でした。

それがここにきて、津波が一気に沖に引き始めています。

例えば、こんな現象に退潮を見てとれます。

  • コロナ禍で急増したGAFAMの売上高の伸び率が直近ではコロナ禍以前を下回っている。
  • コロナ禍の対策として各国政府が資金をばらまいたことで、需要の急増したものの供給能力が追い付かないために、世界的なインフレを引き起こしている。そのためか、日本で長く続いてきた所得の目減りが他の先進国でも起こり始めた。
  • アメリカは中国に大きく依存してきたサプライチェーンから脱し、自国中心の新たなサプライチェーンを構築しつつある。
  • 貧富拡大による革命を恐れる中国共産党は、「共同富裕」というスローガンのもと、アリババなどのIT企業から強制的に資産を没収した。

豊かになった者がその富を社会の底辺で苦しんでいる人々に自主的に分け与えれば少しは社会不安が減るのですが、我慾の本性が強い人類はなかなかそのようなことができません。

私はこれらの社会現象から、

格差(おもに所得と資産)の拡大が進めば進むほど、社会全体の豊かさが失われていく。格差の増加と社会の豊かさは逆相関関係にあり、格差の増大と豊かさの減小がある臨界点を超えると、社会秩序が崩壊する。その崩壊の最たるものが戦争である。」と思えてなりません。1年前に勃発したウクライナ戦争はその一例でしょう。日本周辺でも戦争の危機が高まっています。

わが故郷の詩人・相田みつを氏はこんな詩を残しています。

うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる うばい合えば憎しみ わけ合えば安らぎ

せめて自分は余生をこのように生きていきたい。

      (文責:鴇田 三芳)