第289話 農民 vs コンピューター

百姓雑話
凍てつく厳寒の中、タンポポの花が咲いていました。

農民は太古の昔から、権力や武力、金力を握る者、そして、その配下にある者たちから抑圧され、虐げられ、搾取されてきた。太平洋戦争後は、身分と給与などが保証された給与所得者もそれに加わった。それは今でも、合法的に続いている。

ところで、先週の日曜夜、NHKスペシャル「驚異の人工知能」を驚嘆と恐怖を感じながら食い入るように見た。将棋の佐藤名人と人工頭脳「PONANZA」による電王戦から話しが始まった。あまりにもパワフルな人工頭脳の進歩を目の当たりにし、「農業や農民は一体どうなってしまうのだろうか?」と何度も自問した。専門家の予測では、2020年頃には農業も人口頭脳の影響を受け始めるという。

戦後、日本でも急速に農業機械が普及してきた。今や、機械なしには成り立たない。その典型が稲作である。トラクター、種まき機、田植え機、コンバイン(刈り取りと脱穀を同時に行なう機械)、それに乾燥機。これらを揃えれば、ほとんど一人でも大面積をこなせてしまう。私も、3年前に200万円ほどで買ったトラクターをはじめ、軽バン2台、管理機3台、その他2台と、ひととおりは揃えている。「機械貧乏」と言われるほど、まともに農業をしようと思えば、機械代がかさむ。

機械貧乏くらいなら、知恵を絞り努力を積み重ねれば利益を出す余地はある。

しかし、人工頭脳は人間の能力をはるかに超える可能性があり、人間の仕事と存在意義を根こそぎ奪いかねない。先のNHKスペシャルのナビゲーターを務めた羽生善治3冠は「人工頭脳は瞬時に結論を出すが、その過程がブラック・ボックスなっていて怖い」と指摘されていた。まさにそこが、私たち人類が人工頭脳と対峙する時の最重要ポイントなのだろう。

冒頭に述べた「権力や武力、金力を握る者とその配下にある者たち、そして身分と給与などが保証された給与所得者」に加え、今後は、血も涙もない人工頭脳とも農民は戦い続けなければならないのだろうか。

(文責:鴇田 三芳)