第382話 5つの脅威(2)

百姓雑話

前話の続きです。

4つ目の脅威は日本の貧困化です。

近世以降、日本経済を躍進させたことが3度ありました。欧米列強の外圧による開国と関東大震災、そして太平洋戦争の敗戦です。しかし、これらの災いを福としてきました。

そして今、日本は4度目の「貧困化」という災いの火中にいます。その原因は企業(おもに製造業)の海外流出、少子高齢化、若者の理系離れと私は思っています。おそらく、これらの原因が反転し日本経済が好転することはまずないでしょう。なぜなら、それを担う人材がきわめて不足しているからです。

農業分野も日本の貧困化の影響をもろに受けています。コロナ禍が下火になり、ウクライナ戦争と円安によってほとんどの物価が上がってきたものの、国産農産物の価格はほとんど上がっていません。とりわけ、米と野菜の末端価格は低迷したままです。貧困化によって消費者が農産物の買い控えしているためです。そのいっぽうで、肥料をはじめ、ガソリンや軽油・重油などの燃料費、電気代、各種資材代、人件費などの経費は増え続けています。日本の貧困化以上の速さで農家もますます貧困化しています。

5つ目の脅威は行政のご都合主義です。

私が物心ついた以降でも、日本の農政が農家や消費者のために効果的に機能したことはありません。たとえば戦後、アメリカの食料戦略に押されて推進してきたパン食政策。そのいっぽうで米増産のために膨大な資金を投じてきた基盤整備。矛盾する政策を同時に進めた結果、前者が勝利し、米が余りはじめ減反政策という悪政を長年続けてきました。現場を熟知しない者による政策は必ず失敗するのです。

そしてまた、政府は過ちを犯そうとしています。ウクライナ戦争と円安によって高騰している食料品価格に政府は動揺し、凶作や戦争などで食料供給が減り国民が困窮するような状態になったとき、政府が食料の増産を指示したり流通を規制するなどの体制を整備しようとしています。具体的には、民間在庫の供出(とうぜん、値上がりを意図した企業などによる食料品の買い占めなどは摘発されるでしょう)、非食用品作物から穀物などの食用品への転換(たとえば、花卉農家に穀物や野菜などを作らせる)、食料品の輸出禁止などが想定されています。

この政策は憲法に抵触する可能性が大きいのですが、たぶん、立法されるでしょう。今や、農家の声より、消費者の声のほうがはるかに大きいからです。

私が幼い頃、農民の父は何度か私に言って聞かせました。「貧すれば鈍する」と。

(文責:鴇田 三芳)