第336話 覚悟

百姓雑話

去年の梅雨明けは記録的な早さでしたが、今年はほぼ毎日だらだらと雨が降り続きました。こんなにも雨の日が多かった梅雨は記憶にありません。そして、やっと梅雨が明けたら、例年どおり猛暑が一気に襲ってきました。猛暑を二十数年も乗り越えてきた私でも、年々猛暑がきつく感じられ、ここ数年は熱中症の一歩手前までいくことがあります。

ところで、私は1999年から研修生を受け入れはじめました。短期研修生も含めると、50名以上になります。研修に来られた人の、バックグラウンドはもとより、動機も十人十色でした。農業を職業として明確に捉えている人もおられれば、趣味としての「土いじり」や農的暮らしに憧れてこられた人も少なからずおられました。もちろん、動機に優劣などありません。

それでも、就農を決意し研修に臨んでいる人とそうでない人とでは、やはり作業に取り組む姿勢や言動に違いがでます。とりわけ、もっとも体力が必要な夏場には、その差が歴然と現われます。8月上旬から9月下旬にかけての2カ月は、夏野菜(おもに果菜類)の収穫がピークをむかえ、くわえて秋冬野菜の作付けが目白押しになります。朝から晩まで追いまくられ、やる気が試される季節です。

研修生の中で就農を前提に来られた人は12名ほどおられましたが、現在も営農されている人は6名(みな男性)です。この方々は多くの試練を乗り越えてこられた人たちです。

数々の試練を乗り越えられる人と越えられない人。何が違うのか、私はずっと考えてきました。体力も違えば、経済状態も違います。年齢や家族のサポートも違います。運も違います。皆さんの置かれた状況はまちまちです。

それでも、他に何か違いがあるのではと思い続け、4、5年前から、精神論を振りかざすことが嫌いな私ですが、「覚悟の違い」ということも思うようになりました。というのも、偶然かもしれませんが、今も営農されている6名とも妻帯者なのです。誤解されないように付け加えますが、「独身者は覚悟が希薄だ」と言っている訳ではありません。

          (文責:鴇田 三芳)