第337話 ラッキー

百姓雑話

今から8年前に猛烈な台風が当地を襲いました。暴風雨の中、施設の屋根の上で破れかけたビニールシートを修理した時には、命の危機を感じました。今の体力では到底できない作業です。その時以来、私は台風などの暴風が吹く数ヵ月前から暴風対策をするようになりました。その作業も栽培の一環と考えています。

先月、台風15号により千葉県内では農林水産業だけでも367億6200万円の被害が出たようですが、私どもの農場では、できる限りの暴風対策をとっていたので、被害は軽微でした。昨年9月30日から翌日にかけて当地を直撃した台風に比べれば、かなり少ない被害額です。

今さら言うまでもなく、農業は自然相手です。一年中、自然の脅威と向き合わなければなりません。

ところが、初心者は体験不足により自然の脅威を具体的にイメージできず、経験を積んでくると自然の脅威を過小評価するようになります。私も初心者のころ、台風被害もなく、秋冬野菜を順調に収穫できた時などは、「自分の努力と実力の結果だ」と思いました。

しかし、その収穫は、努力と実力によって得られたというよりも、ラッキーだったのです。

時は過ぎ、幾多の自然災害にあい何度も打ちのめされ、良い結果を得るには幸運も大事だということを私は知りました。個人の能力と努力だけではどうにもならない現実があり、それをのり越えるには運も味方につけなければならないことを。

そもそも、この歳まで生きてこられたのもラッキーだったのですから。

(文責:鴇田 三芳)