第340話 じっくり考える

百姓雑話

日の出がもっとも遅くなった。この時期は忙しくないので、暇にまかせて、うつらうつら考え事をしていると、恐ろしくなることもある。

地球上の生物はおよそ40億前に誕生し、それ以来、少なくても5回は絶滅の危機に瀕したそうである。いわゆる「ビッグ・ファイブ」である。そして、人類の所業によって6回目の絶滅の危機が進行中であると指摘する学者もおられる。

農業をしていても、生物種の激減を実感させられる。農薬の使い過ぎとモノカルチャーのためか、作物の受粉を助けてくれる虫が激減してしまった。そのためにか、今ではカボチャやズッキーニの実がつきにくい。

どうして、こんな時代になってしまったのか。人間の欲望と本能のせいか、特異な生殖能力のせいか、肥大した大脳のせいか、・・・・・。

日々、私たちが考えていることは、いったい何だろうか。目先の仕事や人間関係、お金、SNS上のコミュニケーションとネット情報、健康、食べ物、遊び、買い物、・・・・・。ほぼすべてが自分の視野の中にあることではないだろうか。私も実際、視野に入らない世界に対して考えることは稀である。

トランプ大統領の短いツイッターに、たくさんの人々が一喜一憂し、世界の株価が即座に反応する。インターネットによって情報が瞬時に世界中へ拡散するようになったことで、ここ2、30年の間に、人間の評価基準が変わった。情報に反応しない人や、じっくり考えている人が、まるで愚か者のようにみなされてしまう時代になった。まんまとスティーブ・ジョブズなどのIT長者の罠にはまってしまったかのようだ。

私は、あと何年生きられるかわからないが、こんな時代をどう生きていこう。どうも時代の流れに乗れそうもないので、自然を相手に、じっくり考えながら生きていくしかないか。

                             (文責:鴇田 三芳)