第349話 なぜ米の消費は減ってきたのか(1)

百姓雑話

お米の消費は、1962年ごろをピークに年々減少し、今ではピーク時の半分ほどになってしまいました。その一方で、パンや麺類、お菓子などの小麦の消費は戦後一貫して増えてきました。総務省の家計調査によると、2011年には一般家庭のパンの消費額は米を上回ったそうです。その原因はいくつか考えられます。その一つは、第347話「農業衰退の原因(3)」で指摘したように、アメリカの食料戦略であるのは間違いありません。

ほかの原因としては、手軽さ、食べやすさ、消化吸収性、加工や味付けのバリュエーションの多さを挙げられます。これら4つの原因のすべてにおいて、ほとんどの人にとって小麦のほうが勝ります。

今でこそ優れた炊飯器があるものの、やはりパンのほうが手軽に食べられます。買うだけでいいのですから。米のように研ぐ手間がいりません。

食べやすさもそうです。パンは、お米のように一口分を何十回も噛まなくても済み、何かをしながらでも片手で食べられます。時間に追われている人にとっては、まさにパンは心強い助っ人です。ちなみに、おにぎりがコンビニでよく売れるのは、パンのように手軽で食べやすいからでしょう。

米は、粒なので、消化吸収に時間がかかります。一方、パンや麺類などの小麦製品は、粉なので消化吸収が良く、早めに血糖値を上げてくれます。

加工や味付けのバリュエーションは小麦が米を圧倒しています。ここで、例をあげるまでもなく、スーパーに行けば、一目瞭然です。多種多様な小麦食品がわんさと陳列されています。

これらの原因にくわえ、欧米への憧れと学校給食はパン食を大きく推進しました。私が子どものころに食べた学校給食の主食は、ど田舎だったにもかかわらす、ほとんどコッペパンでした。

最後に、小麦食品の弊害にも触れます。小麦食品は、軟らかくあまり噛まなくても食べられるので、噛む力を弱め、脳の働きを鈍くします。小麦食品は、すぐに血糖値を急速に上げるので、糖尿病のリスクを高めます。小麦食品は、砂糖や塩、マーガリンやバター、保存料や着色剤などの各種の添加物がたくさん使われているので、健康の問題が起きやすくなります。

それでも、実に多くの日本人が小麦製品の虜になっています。米の消費が減るはずです。

                          (文責:鴇田 三芳)