1970年代後半から、日本の農業は衰退の一途をたどってきた。なぜこうなってしまったのか、農業現場から私なりに考えてきたことを述べてみたい。
10年ほど前から、政府などが日本も農産物の輸出を増やそうと提唱している。「農業の六次産業化」というスローガンを掲げたものの、現実的ではないためか、一向に結果がでてこない。
そもそも、農産物の輸出を飛躍的に増やそうとすれば、すでに世界市場を形成している国々と競合しなくてはならい。ニッチな農産物ならまだしも、メジャーな農産物では、アメリカやオーストラリアなどの農産物輸出大国と同じ土俵で戦っても、まったく勝てない。価格と供給量で圧倒されるだけだ。
日本は、自給さえままならないのに、大規模な輸出は無理である。農業でもっとも重要な農地からして、国際競争力を上げるのはきわめて難しい。日本の農地は、少なくても5つの指標において、きわめて狭い。5つの指標とは、総農地面積、国土面積あたりの農地面積率、人口あたりの農地面積、一経営体あたりの耕作面積、そして、一筆(一枚)あたりの面積である。
たとえば、日本がもっとも食料を依存しているアメリカは、農地面積が日本の約9倍、国土面積あたりの農地面積率は日本の約3.5倍、一経営体あたりの面積は70倍以上となっている。オーストラリアにいたっては、農地面積が日本の約90倍、一経営体あたりの面積は約1300倍以上となっている。
日本の農産物は、このような農地の狭さのために既存の輸出国より耕作効率が著しく劣り、生産価格が大幅に高くなってしまう。国際市場で太刀打ちできるはずがない。上述の5つの指標の他にも、日本の農地は土質が悪いという欠点もある。
この圧倒的な農地の差が、日本の穀物の自給率を押し下げ、日本農業を衰退させた原因の一つなのである。
(文責:鴇田 三芳)