1970年代後半から、日本の農業は衰退の一途をたどってきた。なぜこうなってしまったのか、農業現場から私なりに考えてきたことを述べてみたい。
先進7カ国の中で、長らくデフレが続いているのは日本だけである。日銀が2%のインフレ目標をあげ金融緩和を継続してきても、全体的な物価は上がってこない。
しかし、食料品は別である。今年になり、食用油の値段がじわじわ上がってきた。今年3度目の値上げがあるという。食用油のほかにも、バターをはじめとする乳製品、小麦とその加工品、卵、大豆の加工食品、肉類の値段も値上がりが続いている。値段は据え置き、内容量を減らす食品も多い。私が毎食事に食べているヨーグルトは、昔500g入りであったが、いつか450gになり今では400gになっている。
これら値上がりしている食材に共通している点は、そのほとんどが小麦、大豆、トウモロコシなどの輸入穀物から生産されていることである。牛乳や卵、肉類にしても、それを生産するための餌は輸入穀物に多きく依存している。
その穀物の輸入量は増加してきた。日本でこれらの農産物を栽培しても、輸入品には値段で太刀打ちできないからである。穀物の輸入量は、約2800万トン(平成19年)となり、国内生産米の何と4倍ちかくにもなった。食料自給率が下がり続ける訳である。
こうも輸入穀物に依存するようになった背景には、食の洋食化がある。糖質(おもに米)と野菜中心の食事から、肉料理が食の主役へと変化してきた。この洋食化を支えているのが輸入穀物である。小麦粉や食用油、卵、肉類(鶏肉、豚肉、牛肉)がないと、ご飯と漬物くらいしかできない。料理にとどまらず、菓子類やケーキなどの嗜好食品も小麦粉や食用油などが多量に使われている。
もはや、日本人の食はすっかり外国の農民たちと農地に依存し、日本の農民たちと農地は期待されていない。期待されていない農民が頑張れるはずもなく、年々農民の数は減り続けている。期待されていない農地は放棄地と化す。
このように、食の洋食化が、結果的に外国産の農産物の輸入を増やし、日本農業の衰退一因になったのである。
(文責:鴇田 三芳)