第336話 無意識のつけ

百姓雑話

まったく、大変な時代になってしまった。

昨年来、輸入に依存している物の値段が上がり続けている。その中で、もっとも日本に影響するものが原油であろう。ロシアのウクライナ侵攻によって、高止まりしていた原油や天然ガスの価格が、さらに値上がりし始めた。

輸入頼みの食料品も値上がりし続けている。小麦とその加工食品、食用油、大豆製品、魚、卵、家畜肉、・・・・・・・・。あげたらきりがないほど、多くの食料品の値上がりが止まらない。国連食糧農業機関(FAO)が先月発表したデータによれば、世界の食料価格指数(穀物、肉類、乳製品など5品目の取引価格)が、2月に最高値を記録したという。

しかしその一方で、国産農産物の価格は低下している。庶民の所得減少による買い控えにくわえ、コロナ禍の影響もあって、米や野菜の値崩れがはなはだしい。農林水産省が2月18日に発表した令和3年度産米の1月の相対取引価格は60kgあたり12957円といっそう下落した。

野菜も同様で、秋から野菜の値段が記録的に安い。わが家の近くにある安売りスーパーでは最近まで、ほうれん草、小松菜、キャベツ、大根、春菊、人参(1袋3本入り)などはほとんど100円以下。今まで値崩れしたことがなかった長ねぎでさえ従来の半値ほどである。平年並みか高いものは、玉ねぎ、ジャガ芋、蕪など、数えるほどしかない。

そんな安値にもかかわらず、ガソリンや重油、各種資材の値段は上がり、農家の経営を圧迫している。下の写真は、3年半前に野菜の納品で佐倉市に通う道すがら撮ったものだ。老夫婦が稲刈りをしていた。最近、用事があってそこを通りかかったら、すでに放棄地になっていた。

こんな状況が続けば、これから日本農民はどう生き残ればいいのだろうか。奴隷のように働かせてきた技能実習生だって、もはや頼れない。コロナ禍によってエッセンシャル・ワーカーの重要性が改めて社会に認知されたものの、生活が成り立たなくなるまで頑張る農民など一体どれだけいるのだろうか。

結局、農作物の国内自給は今後いっそう落ち込むに違いない。

この問題の根底には、国民の無意識がある。戦後の日本人のほとんどは農業に無関心で、「外国から買えばいいじゃないか」という程度の意識しか持ってこなかった。ましてや、食料安全保障という国家存続の根幹など考えたこともない国民が圧倒的多数ではなかっただろうか。

今や、そのつけを払う時代が来てしまった。万が一、ロシアがウクライナを核攻撃し、あるいはウクライナの原発を破壊し、世界有数の穀倉地帯が放射能汚染されたら、それこそ大変なことになる。大規模に3回も被爆した日本人なら容易に想像がつくはずなのだが、・・・・・・・・・・。

(文責:鴇田 三芳)