日本の食料リスクとして、前々話では日本人の労働に対する意識を、前話では火山噴火などの大規模な自然災害を指摘しました。三つ目に指摘したいのは国際情勢の急変です。
この2年半の間に、新型コロナの世界的なパンデミック、ウクライナ戦争、脱二酸化炭素というエネルギー・シフト、通貨供給量の急増などによって、世界の物流は停滞し、エネルギーと食料を中心に世界的なインフレに突入してしまいました。とりわけ、経済力の乏しいアフリカなどの途上国では深刻な問題になっています。
今まさに、国際情勢の急変による世界的な悪状況の渦中に人類は巻き込まれています。第三次世界大戦が始まりつつあるという指摘さえあるほどです。
日本にとっても、輸入穀物とエネルギー資源の高騰は他人事ではありません。今後、中国の覇権的膨張によって、さらに悪い事態が日本にも起こりうると私は危惧しています。
アメリカのシンクタン「アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所」とヘリテージ財団の統計によると、中国の民間および国有企業は2012年までに発展途上国の900万ヘクタールの農地に投資し、そこで収穫した農産物を自国に送っているようです。1985年から翌年にかけて私はアフリカのソマリアに滞在していましたが、すでに中国資本による道路建設と水田開発が行なわれていました。
中国は、さらになる食料確保をすすめるために、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、ヨーロッパなどへも触手をのばし、2020年までの10年間に世界で700万ヘクタールほどの農地を購入したそうです。2020年時点の日本の耕地面積が約437万ヘクタールなので、その1.6倍の面積を中国は買いあさったことになります。突如ロシアの侵略を受けたウクライナには非常に肥沃な土壌に支えられた広大な穀倉地帯がありますが、何とその農地の1割ほどをすでに中国が購入済みだそうです。足元では、規模は小さいものの、日本の土地や建物などが中国人や中国資本によって買われていて、選挙争点の一つにもなっています。
今後も、中国による食料と海外農地の爆買いは続くでしょう。中国との経済力の差がますます開いていく日本では、円安も手伝って、まともに食料を輸入できなくなる公算が高いと予想できます。
中国との関係で、さらにもっと悲惨なシナリオも考えられますが、それは次話に述べます。
(文責:鴇田 三芳)