昨年は歴史に深く刻まれるような激動の年だった。
コロナ禍に加え、ウクライナ戦争と世界的なインフレが勃発し、人類は狂気の淵でもがき、なかなか抜け出そうにない。これらは今年も続く恐れがある。古希になった今にいたるまで私は、人類がこんな世界的災禍に見舞われたことを知らない。将来2022年を振り返った時、「あの年が・・・・・・・」と認識されるのはほぼ間違いないだろう。
私が身を置く農業分野でも激動の年だった。いや、「破滅的な年」と表現したほうがよいだろう。ほとんどの商品やサービスが一気に値上がりする中で、米と野菜は値下がりした。パンや麺類などの小麦製品がことごとく値上がりしても、米の需要は減り続けた。まるで、日本人は小麦製品の虜になってしまったかのようだ。
米や野菜の値段が下がる一方で、肥料代や燃料代、資材代などが値上がりし、米農家や野菜農家は泣きっ面に蜂の状態に陥った。専門家によると、米農家の8割は赤字になり、高齢化とあいまって廃業する農家が急増する可能性があるという。野菜農家も同様に減少し続けるだろう。
肉や卵、酪農などの畜産部門は、最終商品を値上げできたものの、飼料の輸入価格が高騰し、ほとんどの畜産農家の利益は減ったに違いない。
こんな状況を前にして、上から目線かもしれないが、私は正直なところ「いったい日本人の大多数は何を考えているんだろうか」と思えてしまう。「食料安保を取りもどそう」などと政治家や学者などが声高に叫んだところで、ほとんどの消費者の消費行動が大きく変わることはないだろうし、食料生産現場にはその声が届きそうもない。仮に届いたところで、高齢化した農家には具体的な行動をとる力が残っていない。
私には、食料、エネルギー資源、経済、公的保険、防災、軍事という重要な安全保障のどれをとっても、今年から改善されるとはとても思えない。
こんな暗澹たる思いを胸に今朝、農場で元旦を仰いだ。そして、この光に似た旭日旗の船団が台湾周辺に群れる事態が起きないように祈った。
(文責:鴇田 三芳)