第373話 財産を食いつぶす

百姓雑話

私が営農している地域でも耕作放棄地が年々増えている。右側が私の農地で左の耕作放棄地からはクズが侵入してきて困っている。こんな草だらけの放棄地も5年ほど前までは老夫婦が耕作していた。耕作をやめれば、あっという間に草に覆われてしまう。4か所ある私の農地すべてがこんな耕作放棄地に接していて、まったく迷惑だ。営々と耕作してきた農地という財産が失われていく光景は日本の現状そのものである。

農地の荒廃はほんの一例で、バブル経済が崩壊して以降、日本はいろいろな財産を食いつぶしている。

日本の高度経済成長を支えてきた家電企業も今はその面影がない。大手家電メーカーのサンヨーやシャープは中国や台湾の企業に買収され、原発事業でつまずいた東芝も会社を切り売りしている。中小の家電メーカーをあげたらきりがない。

道路や橋、マンション群などのインフラも老朽化し、修理や補修もままならず、ガタガタだ。

会社やインフラだけではない。実に多方面で財産を食いつぶしている。

団塊世代のリタイヤにともない年金生活が急増し、蓄財がほとんど増えない。日銀の発表によると、ここ10年でアメリカは家計金融資産が2倍強に増えているが、日本ではたかだか14%しか増えていない。今春から急速に進んでいる円安ドル高は、国民と国家も財産を目減りさせ、国力を衰退させている。

国力を支える大きな要素は技術力と言っても過言ではないだろう。その技術力を計る指標として特許出願数がある。かつてアメリカと首位を競っていた日本だが、今や中国の25%以下、アメリカの50%以下となり、特許という知的財産や技術力も食いつぶしている。大学に対する国の歳出が減り理系学生が減る一方の日本では、当然であろう。

コロナ禍で医療従事者は、非常に重要な役割をにない命の危険に身をさらし、過酷な労働を続けてきた。しかし、若手医師の酷使はコロナ禍で始まったことでない。それ以前から、若手研修医を安く、あるいは無給で酷使してきた現実が社会問題になっていた。並みの勉強では医師にはなれず、医学博士号をとるまででも数千万円の税金がかかる。医療従事者の中でもとりわけ医師は国民の財産である。その財産を安く酷使し疲弊させ離職させてしまう国家、日本。

数年前から日本は貿易赤字になり、円安もあって赤字が増えている。この赤字を補填している海外からの収入(投資収益、利子、賃金など)も減る一方である。国民・国家の財産(国富)も食いつぶしている。

(文責:鴇田 三芳)