長年にわたり農業をしてくると、本来8本あるはずの脚が何本も欠けている蜘蛛や片方の羽が無くなっている蜂などを見かけることがある。そんな体でもしっかり生きている。体に不具合があっても一生懸命に生きているのは人間だけではない。
誰でも本来、せっかく現世に生をうけた身であれば、命を健やかに全うしたい。
ところで、長かった夏休みが終わり、子どもたちが学校に通い始めた。久しぶりに会えた仲間と楽しそうに歩いている子もいれば、けだるい表情で一人とぼとぼと歩いている子もいる。そんな生きているのが辛そうな子どもを見ると、何か教育が間違っていると思えてならない。
その間違った教育の一つが、心身の健康に関する教育の欠如があるのではないだろうか。
例えば、朝食ぬきや菓子パンだけを食べて登校する子も珍しくないらしい。育ち盛りの子どもらがこんなことでいいはずがない。甘い菓子や飲み物の虜になっている子どもたちがたくさんいるが、そんな飲食は健康を害しやすくする。
子こどもたちの健康を蝕むのは飲食物だけではない。いじめやテストによるランクづけの横行は子どもたちの心の健康を著しく傷つける。
心身の健康教育は、目先の結果を生み出しにくいが、長い人生においては極めて重要であることは明白である。とりわけ年を重ねると心身の健康の重要性を痛感するが、なかば手遅れの人も多い。やはり、義務教育の中で心身ともに健康に生きられるための知識と術と体験を教える必要がある。
日本では有機栽培の割合が極めて少ない。政府はこれを桁違いに増やそうとしているが、今までのような教育を続けている限り、それは無理である。時間はかかるが、義務教育で健康教育を積極的に行なわないと、けっして有機農業は増えない。
文責:鴇田 三芳