第392話 野菜価格の高止まりの原因

百姓雑話

昨年からじわじわと野菜の値段が上がってきた。自宅近所の安売りスーパーでも、大根半切りが100円とかする。長ねぎやキャベツ、人参などの露地野菜はほぼすべて高い。例年4月ともなれば、大産地の大根やキャベツがどっと出回り安くなってきたのだが。

生鮮野菜以外の食品が軒並み値上がりしてきたことを考えれば、野菜の値上がりが突出しているほどではないが、やはり気になる。生産者の私が気になるくらいだから、消費者の多くも気になっているに違いない。それでなくても実質賃金の減少が続いているため、大半の消費者は大変だ。

一般的に、物やサービスの値段はいくつかの要因で決まる。需要と供給のバランス、供給側が独占(あるいは寡占)状態か競争状態か、天候などの自然災害の有無、はやりすたり、革新的か汎用的か、世界情勢が良いか悪いか、などの要因がおもに価格形成に影響する。世界情勢の悪化でいえば、古くは中東戦争にともなう石油によって起きた物価の高騰、最近では新型コロナのパンデミックやウクライナ戦争による物価の高騰がある。

野菜の値段はおもに、資材費、人件費、輸送費、天候などに左右される。

資材には肥料、農薬、種苗、ビニールなどの被覆資材、作業車やトラクターなどの機械燃料、荷造り用の袋や梱包材などの多種多様なものが含まれるが、そのほとんどが輸入に大きく依存している。そのため、新型コロナのパンデミックによって物流が滞り資材が値上がりした。そのところにウクライナ戦争で世界的なインフレが起き、さらなる値上がり。くわえて日本では、その後の円安によって輸入製品が高騰したため、農業資材費も高騰してしまった。この4年の間に三度も資材費が膨張した。

人件費に関しては、技能実習生として安く使ってきた中国人やベトナム人なども新型コロナのパンデミックで帰国してしまい、人手不足が一気に拡大した。とくに彼らに依存してきた大規模農家のダメージは大きかった。どうにか新型コロナのパンデミックが収まった矢先に、急激な円安で円の価値が激減し、外国人労働者が期待ほど戻らない。人手不足と人件費の増加のダブルパンチをこうむった。これまた、農家の経営を圧迫している。

輸送費に関しても、燃料費と人件費の増加にみまわれている。

これらの状況が重複したことはかつてなかった。野菜価格の高止まりは当然の帰結と言える。消費者も大変だろうが、農家も必死なのである。

(文責:鴇田 三芳)